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蜂蜜塗布後の変化(木の自衛能力)

蜂蜜塗布することで、半枯死で生存できる木々が多く認められた。枯死部は崩落して落木したが、半枯死の生存部には、これまで蜜が少なかった蜜を樹皮上部まで漏出するようになっていた。(カシナガ穿孔でナラ菌の増殖部の通水を自ら中止して、健常部への通水の優先化)

結果として、半枯死部の生存部には樹皮上部にぎっしりとコガネムシなどが飛来、蟻や蝶やスズメバチ、そして鳥も蜜に誘導されるようになっていた。

​木は、蜜を漏出して、能動的に自らに蟻などの虫を誘導してるかもしれない。感染木への蜂蜜塗布は、完全枯死の予防と半枯死でも生存してとどまることで、落木への昆虫の産卵、根元でのどんぐりからの発芽、蟻の誘導で森の再生の一助になるかもしれない。

殺虫剤ではなく、蜂蜜塗布を選択

殺虫剤の無効性と周辺への環境破壊となる副作用を考え、また害虫の天敵となり得る蟻や蜂や鳥(キツツキ)などの力を発揮させるべく、樹皮に蜂蜜(砂糖水でも)を塗布した。

翌年から、ナラの木の根元に認めていたフラスの消失があり、感染拡大が抑えられていた。

​半枯死のナラの木の観察で、生き残った幹から蜜を漏出して、虫を誘導している自衛能力を見た。

​完全に枯れてしまってからでは、その能力は発揮できない。

Project 1. 樹皮への蜜の誘導

キクイムシの感染を受けやすい木々は、樹齢の高い大型の幹の太い木に認め、蜜の漏出が少なく、乾燥した木に多く認められる。

太い木でも、根元が湿潤して、蜜の出ている木では、周囲の木ににフラスが認められていても、感染は起こしていなかった。樹木の生きのいい状態と思われるが、他にも、蜜による自衛能力が隠されているかもしれない。

その一つに、蜜による他の昆虫や蟻や蝶、蜂(スズメバチ)、鳥(キツツキなど)の誘導が、自衛能力につながっているように思えた。

​中でも蟻は、(特に体長が1㎜前後の)カシナガキクイムシの穿入孔(直径2mm)に入り込んで、捕捉できる可能性がある。

以前すずむしを飼っている時に、虫かごの隙間から侵入した蟻(小型)が、数時間の内に、集団で全滅させたのを目撃している。(宮城教育大学附属中学校3年(2019)片山友康(中学校理科展で2017.2018.2019発表 部会長賞受賞)

Project 2. 自然の自浄作用に学ぶ

ナラ枯れはおそらく太古の昔からあって、キクイムシも昔からいた。

ナラ枯れの森で、感染が増悪しても数年で落ち着くことが知られており、森の自然に備わった防御機構があると思われる。

3年間のナラ枯れの観察から、半分枯死に至った木の重要性を感じている。

それは、感染を起こした木が、感染を木全体に蔓延しないように通水機能を停止させ、栄養と水分を生き残っている幹に送り続けることで、樹皮にこれまで少なかった蜜を送り、樹液を漏出させて外から蟻などの虫を誘導する。

​カシナガは、木に穿孔して蟻が嫌っているフラスを排出して蟻などの這い上がりを抑えて新成虫の羽化を目指すが、感染を起こした翌年位から感染木が自ら出すようになった蜜によって、蟻などの捕食する能力を有する虫を、自分の樹皮に誘導することになる。

  森の防人

樹皮の枯死部分には、昆虫の産卵があり、森の輪廻と自浄作用がある。

枯死部分も、森の再生と偏ったカシナガの感染状態を改善する力が備わっている。

​枯死に至っても、根元にはどんぐりから出た芽が、次の森を作る準備が始まっている。

Project 3. 温暖化による生息域の変化と新たな環境への人為的補助

樹氷の森は、冬季の厳寒期状態で、おそらくキクイムシ生息に制限があった。

アオモリトドマツが高樹齢化していると思われるが、高齢化しているうえに、これまで遭遇しなかった新たな敵に鞭打たれていると思われる。

​ナラ枯れの自浄作用に学ぶ新たな敵への補助は、高齢化している木々の樹皮に早急に蜂蜜を塗布して、同時にフラスの除去と木々の洗浄(高圧)、ナラ枯れ再生の森から土壌を木の根元に移植することを、試したい。

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